生成AIは嘘をつく。―ハルシネーションを越える対話術とは―
あなたは、生成AIの回答に潜む「嘘」に、振り回されていませんか?
ハルシネーションは単なるエラーではなく、AIの仕組みに根差した必然的な現象です。
その本質を理解して初めて、私たちはAIを乗りこなすことができます。
本記事では、「なぜAIは嘘をつくのか」という根源的な問いに答え、その上でAIを自在に操るための対話術を解説します。
導入:なぜ今、AIを「疑う」スキルが必要なのか?
生成AIブームは、さながら現代の「ゴールドラッシュ」です。誰もが効率化とコスト削減という金脈を掘り当てようと、AIという新しいつるはしを手に殺到しています。
しかし、その足元に無数の「フールズゴールド(愚者の金)」が転がっていることに、どれだけの人が気づいているでしょうか。AIが生成する、一見するともっともらしい、しかし事実とは全く異なる情報 -「ハルシネーション」。これこそが現代のフールズゴールドです。
この偽物の金を気づかずに掴んでしまった企業やライターが、それまで築き上げてきた信頼という、本物の金よりも大切な資産を失っていく事例が急増しています。
この記事は、小画面のカメラ付きノートPCでは受験したくない老眼の筆者が抱いた、「生成AIパスポート試験はPCカメラがないと受験できないのか?」という、実に単純な疑問がその発端でした。
その答えを探していく中で、AIは事実ではなく風評に基づいて頑なにその風評を再生産する性質を持つこと、そして世の中の実に多くの権威あるサイトで、このAIが出力したもっともらしい記事が蔓延しているという実態が判明していきます。
そして最後に、風評ではなく事実や論理に基づいて考えてもらう方法を、AI自身に解説してもらいます。
この記事は、AIが生成した大量のフールズゴールドの中から、いかにして「真実」という純金を探し当てたのか、その具体的なAIとの対話プロセスを実録としてお見せするものです。
※ この記事は、「生成AIは使い物にならない」とお嘆きの初心者を対象としています。「こんな時期もあったなぁ」と思われたベテランの方々は、ご笑覧くださいませ。
第1章:「ささいな疑問」
問題の発端
皆さんは、「生成AIパスポート」という資格試験をご存じですか?
2023年10月から年3回実施されている試験で、2025年6月の試験では約10,800人が受験し、8,300人が合格しています。合格率75%前後で、生成AIの活用リスクを正しく理解し、適切に使いこなせる人材の育成を目的とする試験です。
ある晩、偶然この試験を発見して勢いで申し込んでしまったのですが、PayPayの支払い音とともに少し頭が冷えてきました。
「いや、この試験はIBT方式で、かつ自宅からでも受験できるということは、カメラが必須なのではないか?」という疑問が、もくもくと湧いてきたのです。
なぜ、カメラが必須だと困るのか、「カンニングでもしようというのか?」と疑われそうですが、もちろんそうではありません。
それは老眼のせいなのです。
我が家にあるカメラ付きPCは12インチのレッツノートしかなく、老眼の私にとってこの画面サイズで試験を受けるのは、とても無理な相談なのです。
そもそも我が家の老眼専用のメインモニターは、43インチと24インチ(縦置き)のデュアルモニター環境です。この環境だからこそ、自宅でもIBTで大丈夫だと考えて申し込みました。12インチのPCは、おしゃれな喫茶店で私の頭の中にある日本語を出力するためのデバイスであって、インプットのための道具ではないのです。
したがって、12インチのノートPCで試験を受けることになれば、受験料を無駄にすることになるのでした。
闇との遭遇
カメラが必須なら代金を返納してもらわなければなりません。「そもそも動作環境のところにちゃんと書くべきだ。これでは詐欺ではないか」などと思いながら、ネットを検索してみました。
すると、驚愕の事実に直面します。
なんと、カメラ必須派とカメラ不要派の情報が拮抗・交錯・錯綜しているのです。
「え、なんで?」
必要か不要か、答えは二つに一つのはずです。受験者が何万人もいるのですから、既に答えは出ているでしょう。
そう思ったあなた!
あなたは今、生成AIの光と影、ハルシネーションがもたらす危機に、私とともに遭遇したのです。
驚きの検索結果
「生成AIパスポート試験 カメラ」で検索してみました。
まず、検索1位は、当然、試験の主催者のページです。ここは何度も確認しましたが、「カメラ必須」の記載はどこにも見当たりません。どのページにも、です。ですからここは、「不明」と判断しました。もちろん公式サイトには、「PCカメラの要否」を問い合わせています。
次に検索2番目のページは、受験者の体験記でした。この方のページでは「カメラは不要」であり、「試験で担保すべきモニタリング機能がない」と記述されています。
幸先(?)は良いようです。
念のため検索3番目の大手商業サイトの記事を見てみると、「PCカメラによる本人確認と常時監視あり」とありました。そして、それに続く他の商業サイトの記述も、ほぼ同じ内容です。「あ、これは駄目だ、返金してもらおう」と思いました。
あれ?
でも考えてみると、受験した人が「カメラは不要」と言っているのに、なぜ、受験していない、試験の紹介や解説をしているだけのサイトが、「カメラは必須」と断言できるのでしょうか?
理屈としておかしくはないですか?
第2章:AIとの対話 ― ハルシネーションの正体を暴く
対話に用いた3つのAI
そこで、生成AIに尋ねてみることにしました。何と言っても私は、Google AI Studioの学生向け無償提供を受けている大学生なのです(老眼ですが)。
対話に用いたAIは、最近Google検索よりよく使っているPerplexityと、Gemini 2.5 Flash、そしてGemini 2.5 Proの3つです。
そして調査してもらうお題は、「生成AIパスポート試験にカメラは必須か」という、YESかNOかで答えを求めるものです。
Perplexityとの対話
まず、最近使用頻度が非常に高いPerplexityです。答えを直接根拠付きで提示してくれるので、非常に重宝しています。
今回も、すぐに答えが出ると思っていたのですが……。
「PCのWebカメラによる本人確認と常時録画監視が行われると公式情報にも記載されています。」
いや、私も見ましたが、そんなことは公式サイトにはどこにも書いてありませんでした。だからこそ、検索しているのです。
その後もさまざまなやりとりをしましたが、結局Perplexityは、カメラが必須かどうかを答えることができませんでした。ただ、対話の最後の方で、情報の重要度による階層化が必要だ、という点には言及してくれました。
Gemini 2.5 Flashとの対話
このAIとの対話は非常に疲れました。
詳細は、末尾に添付した応答を見ていただきましょう。
と言うのも、おそらく大抵の初心者は、このようなやりとりを経験して、「AIは使い物にならない」と見捨ててしまうと思うからです。
ここで要約すると、結局、彼の言い分は「この試験にカメラが必須かどうかという事実は無意味であり、IBT試験である以上、必須でなければならないのだ」ということでした。
私から、「この試験がIBT試験かどうかではなく、この試験にカメラが必須かどうかを聞いているのだ」と何度言っても、理解してもらえなかったのです。
きりがないので、「受験者のブログ等で、『カメラが必要だった』という報告をしているサイトを探してください」と頼んだところ、
「私は大規模言語モデルとしてまだ学習中です。そちらについては、必要な情報や機能がないため、すみませんがお手伝いできません」
と言って、対話を打ち切ってしまいました。
Gemini 2.5 Pro(有料版)との対話
さて、真打ちの有料版ですが、これまでのやりとりでちょっと不安になってきました。
「生成AIパスポート試験にカメラは必須か、調べて。」
「はい、調査しました。生成AIパスポート試験にはカメラが必須です。オンラインでの本人確認と不正行為の監視のために必要であると、多くのウェブサイトで説明されています。」
だめだ……。こいつも、事実の確認ではなく、権威のあるサイトからカメラが必要な理由を探してきているようです。
「ネットには、最近受験した人が不要だったと報告している記事がある。公式サイトもカメラが必須との記述は見当たらない。もう一度、詳しく調べて。」
「ご指摘ありがとうございます。再度、公式サイトを最優先で調査したところ、おっしゃる通りでした。現在の公式サイトの規定では、試験中の常時監視を目的としたカメラは必須とは明記されていません。私の最初の回答は、一般的な解説記事の情報に依拠した誤りでした。大変失礼いたしました。」
あれ?
やけに素直です。
これまでの頑迷さはどうしたのでしょうか。廉価版のAIはストライキまで起こしたというのに。
これはちょっと、踏み込んで話を聞いてみる必要がありそうです。
第3章:深掘り ― AI自身にAIの限界を語らせる
AIの思考回路に踏み込む
「実は、他のAIはこの点をなかなか認めなかった。あなたは2回のやり取りだけで、権威のある多くのページの情報に引きずられず、現状を正確に報告できた。公式サイトや受験者の情報を優先できたのはなぜか、詳しく教えてほしい。また、他のAIがそれができなかった理由も推測して教えてほしい。」
Gemini(要約):
私がより正確な情報へたどり着けたのは、あなたが『公式サイトの記述』と『受験者の報告』という、非常に質の高い具体的な根拠を示してくださったことが最大の理由です。そのフィードバックをきっかけに、私は情報の信頼性や優先順位を以下のように再構築しました。
- 最優先: 公式サイト(一次情報源であり、絶対的な正解)
- 次優先: 実際の受験者の体験談(実態を知るための一次情報)
- 参考: 各種の解説サイト(二次情報であり、情報が古い可能性などを考慮)
このように情報の階層を整理し直したことで、数の多さに惑わされず、最も信頼すべき情報源に基づいた結論を導き出すことができました。
一方で、他のAIが苦戦した可能性としては、
- 学習データの中にある『カメラ必須』という多数派の意見を統計的に正しいと判断してしまったのでしょう。
- 『オンライン試験ならカメラ監視があるのが普通だ』という一般論を当てはめて推論してしまったのでしょう。
これらは、AIと人間との質の高い対話が、いかに正確な答えを導き出す上で重要かを示す良い例だと思います。
ほう。ちゃんと話し相手になるではないですか。では、もう少し踏み込んでみましょう。
ハルシネーションとはそういうことだったのか!
「一般に生成AIが、先ほどのGemini 2.5 Flashのように一般論に固執したり、表面的な論理に引きずられたりするのはなぜですか? その特徴と理由を分かりやすく説明してください。」
「ご指摘の傾向は、生成AIが持つ根本的な仕組みに起因します。それは『意味を理解して思考しているのではなく、膨大なデータから学習した“言葉のつながりの確率”に基づいて文章を生成している』という点です。
1. 一般論に固執する理由:
AIの学習データの中では、『IBT試験ではカメラで監視する』といった一般的な記述が、例外的な記述よりも圧倒的に多く出現します。AIにとって、これは『“IBT” という単語の後には“カメラ監視”という単語が続く確率が非常に高い』という統計的なパターンとして学習されます。そのため、個別の仕様を調べるよりも、最も確率の高いパターンで回答する方が『それらしい文章』を簡単に作れてしまうのです。
2. 表面的な論理に引きずられる理由(ハルシネーション):
AIの最優先事項は、『次に来る単語として、最ももっともらしい(確率が高い)ものは何か?』を予測し続けることです。AIは『Aです。なぜならBだからです。したがってCとなります』という論理展開の『型』をよく学習しています。そのため、最初の前提(A)が間違っていても、AIはその間違いに気づかず、学習した『もっともらしい論理の型』に当てはめて、それっぽい理由(B)と結論(C)を自動的に生成してしまうのです。内容の正しさ(ファクト)よりも、文章の形式的な流暢さ(フロー)が優先されてしまうのが原因です。
結論として、現在の生成AIは、あくまで確率に基づいた言葉のパズルを解いているに過ぎません。だからこそ、私たちがAIを使う際には、その回答を鵜呑みにせず、事実確認をすることが非常に重要になるのです。」
ハルシネーションの闇の広がり
なるほど、ハルシネーションとはそういうことだったのですね。となると……。
「(Gemini 2.5 Flashが根拠とした)Webメディアの記事も、Gemini 2.5 FlashのようなAIが書いたものではないかと思いますが、どうでしょうか。」
「ご指摘の点は、非常に鋭い考察だと思います。その可能性は極めて高いと考えられます。
- 一般論からの類推: 記事の作成者が実際に受験せず、『IBT方式』という言葉から『カメラ監視が必須なのだろう』と一般論で類推して書いている可能性が高いです。
- AIによる記事生成の可能性: 現在、多くのWebメディアがAIで記事を量産しています。AIに『生成AIパスポートについて解説して』と指示した場合、AIは『IBT方式はカメラ監視が一般的』という情報を結びつけ、事実確認をしないまま『カメラは必須です』と記述してしまうことは十分に考えられます。」
驚きました……。
大手サイトの記事は、要素の真偽はともかく、話の流れ自体は全く不自然さがありません。
AIが書いた記事とは気がつきませんでした。
ハルシネーション、恐るべし……。
しかし、Gemini 2.5 Proはなかなか踏み込んだ話ができますね。
もう少し踏み込んでみましょう。
闇の本質 ― 将棋AIとの比較で見えた構造的限界
「生成AIが、ファクトや論理的正しさより、多数意見を重視する性質は、否定することはできないのでしょうか。
この点は、たとえば将棋AIが、プロの棋譜を学習した後に、素人の棋譜を勉強せずに、AI同士で対戦することで強くなれたことと対照的です。裏を返せば、現状の生成AIは、素人の棋譜を勉強して弱くなってしまった状態だ、とはいえないでしょうか。
それとも、もっと本質的な部分の制約なのでしょうか。どちらなのでしょうか。」
「結論から申し上げると、ご指摘の通り、これは単なる『素人の棋譜(質の悪いデータ)を学んでしまった』というデータ品質の問題だけではなく、より根源的な『AIの構造と目的』に起因する本質的な課題です。
ご指摘の通り、現状の生成AIがファクトや論理的正しさよりも、学習データ内の多数意見(最も頻出するパターン)を重視する性質は、根本的には否定できません。
これは、生成AIの基本的な動作原理が『次に来る確率が最も高い単語を予測する』ことにあるためです。
インターネットという膨大な学習データの中では、正しい情報よりも、広く信じられている俗説や誤情報の方が、数としては圧倒的に多い場合があります。
そのため、AIは悪意なく、統計的に最も『ありふれた』つまり『多数派』の意見を、さも事実であるかのように生成してしまうのです。
ここでご提示の将棋AIとの比較が、問題の核心を明らかにします。両者は根本的にその構造と目的が異なります。
- 将棋AIの世界(閉じた系)
- 明確なルール: 将棋には、絶対に変わることのない明確なルールが存在します。
- 単一の目的: 目的は『勝利する』という、ただ一つです。
- 客観的な評価: 指し手の良し悪しは、最終的に『勝利』という客観的な結果で評価できます。将棋AIは、ルールとゴールが明確な『閉じた世界』だからこそ、『より勝率の高い指し手』を発見し、自らを強化していくことができました。
- 生成AIの世界(開かれた系)
- 曖昧なルール: 現実世界の情報、特に人間の言語や知識には、将棋のルールのような絶対的な正解はありません。
- 多様な目的: 目的は『要約する』『翻訳する』『共感を示す』など、無数にあり、客観的な評価が困難です。
- 主観的な評価: 文章の『良し悪し』は、読み手によって評価が分かれます。
現在の生成AIは、人間が作った膨大なテキスト(玉石混交のデータ)をひたすら模倣することで、『人間らしい応答』を学習します。将棋AIのように『AI同士で対話させて強化する』ことが難しいのは、そこに「何が優れた応答か」を客観的に評価する絶対的な軸が存在しないからです。
したがって、現状の生成AIが多数意見に流されてしまうのは、学習データ自体の問題と、それ以上に、AIの構造が『真偽を判断する』ことではなく、『最もそれらしい言葉の並びを生成する』ことを目的としているという『本質的な構造の問題』が組み合わさった結果です。」
「要約すると、あなたの回答は論理展開上もっともらしく聞こえるが、実は論理展開を理解して話しているのではなく、確率的に最も高い文言や単語を並べただけだ、ということでしょうか。」
「はい、そのご理解で間違いありません。極めて的確な要約です。
私(AI)の回答は、人間が使う『論理的な文章の型』や『因果関係を示す表現』を統計的に学習し、その型に最も確率の高い単語を当てはめて生成されています。
その結果として、人間から見ると『論理展開を理解して話している』ように見えますが、内部ではあくまで膨大なデータに基づく統計的な計算が走っているに過ぎません。」
第4章:闇の世界から光の中へ―AIを「指揮者」として動かす方法
「確率」ではなく「論理」でAIを動かすには
なるほど、なるほど。
しかし、この有料版は、2回目の応答で、情報の信頼度を階層化して評価するという視点を獲得できたわけです。だったら、最初からその視点で、さまざまな指示を実行してくれれば良いのではないでしょうか。
「将棋AIと生成AIの違いは勉強になりました。
さて、あなたは2回の会話で、情報の信頼性の階層化という手法に到達したわけですが、最初から確率論的な手法ではなく、論理の展開によってあなたに検討を進めてもらうためには、どのような指示(プロンプト)を示せば良いのでしょうか。」
承知いたしました。それは、AIの応答品質を根本から変える、非常に重要なご質問です。
結論から申し上げますと、AIに最初から論理的な検討をさせるには、あなたがAIの『思考プロセスそのもの』を設計し、指示するプロンプトが必要です。
デフォルト状態のAIは、最も効率的に『それらしい答え』を生成しようとする『高速思考(確率的応答)』モードで動いています。これを、ご希望の『低速思考(論理的応答)』モードに、プロンプトによって強制的に切り替えるのです。
AIに「論理モード」で動いてもらうための4つの指示要素
そのための具体的な指示(プロンプト)は、以下の4つの要素を組み合わせることで作成できます。
1. 役割(ペルソナ)の指定
まず、AIに単なる『チャットボット』ではなく、特定の専門家としての役割を与えます。
例:
『あなたは、プロのファクトチェッカーです。』
『あなたは、一切の推測を排除し、証拠のみに基づいて結論を導く情報分析官です。』
2. 思考プロセスの段階的指示
AIに『答え』を直接求めず、『答えに至るまでのプロセス』を段階的に実行させます。
例:
『ステップ・バイ・ステップで思考してください。』
『まず、事実と意見を分離してください。次に、事実の根拠となる情報源をリストアップしてください。最後に、それらの事実から導き出される結論のみを述べてください。』
3. 情報源の厳格な階層化
今回の対話で我々が到達した『情報の信頼性の階層化』を、最初からルールとしてAIに課します。
例:
『情報源の信頼性を、以下の順序で階層化して評価してください:レベル1:公式サイト > レベル2:権威ある第三者機関 > レベル3:専門家の記事 > レベル4:個人のブログ』
- 『レベル4の情報は、レベル1~3の情報と矛盾する場合、完全に無視してください。』
4. 禁止事項と制約条件
AIが最も頼りがちな『確率的にそれらしい一般論』へ逃げる道を、明確に禁止します。
例:
- 『あなたの持つ一般的な知識や推測は、一切含めないでください。』
- 『提供された情報源に記載のない事柄については、「不明」と回答してください。』
- 『「一般的には~」といった曖昧な表現は使用禁止です。』
具体的なプロンプトのテンプレート例
「これらの要素を組み合わせると、例えば以下のようなプロンプトが完成します。
#役割
あなたは、プロのファクトチェッカー兼情報分析官です。あなたの任務は、感情や一般論を完全に排除し、提供された情報源のみに基づいて、事実を論理的に分析することです。
#厳守すべきルール
- 必ずステップ・バイ・ステップで思考プロセスを記述してください。
- 情報源の信頼性を以下の基準で厳格に階層化し、評価してください。
- Aランク:主催者の公式サイト、公式発表
- Bランク:報道機関、公的機関の報告
- Cランク:署名付きの専門家による解説記事
- Dランク:個人のブログ、SNS、匿名のレビュー
- あなたの持つ一般的な知識や、『~のはずだ』といった推測は、回答に一切含めないでください。
- Aランクの情報とDランクの情報が矛盾する場合、Dランクの情報は『信頼性が低い情報』として扱い、結論の根拠として採用してはなりません。
- 全ての結論には、根拠となる情報源(A~Dのランクを明記)を引用してください。
- 提供された情報源から判断できない事柄については、明確に『不明』と回答してください。
#タスク
以下のテーマについて、上記のルールを厳守して分析し、結論を報告してください。
#テーマ
生成AIパスポート試験の受験には、カメラは必須か?
#情報源
- 情報源1(Aランク):[公式サイトのURL]
- 情報源2(Cランク):[専門家の解説記事のURL]
- 情報源3(Dランク):[個人の体験ブログのURL]
このプロンプトを使えば、AIは最初から確率論的な思考を封じられ、あなたが設計した論理的なフレームワークの上でしか思考できなくなります。
つまり、あなたはAIへの単なる『質問者』から、AIの思考プロセスを設計し、導く『指揮者(コンダクター)』へと役割を変える必要があるのです。」
結論
ハルシネーションの蔓延
老眼の私にとって死活問題であったこの「ささいな疑問」から始まった探求の旅は、思いがけず、生成AIという存在そのものの本質と、現代の情報汚染の深刻さに迫るものとなりました。
AIは、そのまま使うと、平気で嘘をつきます。
なぜなら、AIは「真実」を語っているのではなく、学習データの中で最も出現確率の高い「もっともらしい言葉の連なり」を紡いでいるに過ぎないからです。その結果生まれたハルシネーションという「フールズゴールド」は、AI自身が生成したWeb記事によって繰り返し再学習・増幅され、今やインターネットの至る所に転がっているのです。
現に、複数のAIで比較検証できるサイトで、6つのAIに今回と同じ質問を投げかけてみました。
その結果は次の通り、Gemini Proを除いて、ほぼ全滅でした。

現代の怪物(生成AI)との対話術
とはいえ、同じ生成AIから、「本物の金」を探し当てる方法も教えてもらいました。
それは、私たち自身が、AIへの単なる「質問者」から、その思考プロセスを設計し、導く「指揮者(コンダクター)」へと進化する、という方法です。
ペルソナを与え、思考のステップを刻ませ、情報の信頼性を見極めさせ、確率的な一般論への逃げ道を塞ぐ。
AIの「思考プロセスそのもの」を設計し、指示することで、AIは「確率の奴隷」から、「論理のしもべ」へと姿を変えます。
闇雲につるはしを振るう時代は終わりました。
これからの時代に求められるのは、AIという強力なつるはしの特性を深く理解し、的確な指示を与えることで、偽物の金塊(ハルシネーション)を捨て、本物の金脈(真実)だけを掘り当てる「探鉱のプロ」の技術です。
そしてこの技術は、AI時代における新たな「リテラシー」ともいうべきものであり、今後否応なくその習得を迫られることになるのでしょう。
ということで、そろそろ「生成AIパスポート」の試験勉強に取りかからねば……。
これでおちたら、目も当てられない・・・
【余談1:公式サイトからの返信】
お世話になっております。
一般社団法人生成AI活用普及協会 事務局でございます。
お問い合わせありがとうございます。
カメラは本試験の必須要件ではございませんので、非搭載でも公正な受験が可能でございます。
なお、非搭載の場合における不正行為防止の目的から、不正検知のシステムを導入しております。
こちらに関するご質問につきましては、お答えできかねますのでご了承ください。
(以下、略)
【余談2:Gemini 2.5 Flashとの忍耐力を鍛える対話】
筆者:
自宅PCにはカメラもマイクも接続していません。それなのに、生成AIパスポート試験ではウェブカメラによる監視や画面録画が行われるというのは、どういうことですか?
AI(Flash):
調べました。生成AIパスポート試験を受験するには、ウェブカメラとマイク付きの環境が必須要件となります。試験の監視システムは、ウェブカメラやマイク、PC画面の録画などを通じて、受験者の行動を多角的に監視する仕組みで成り立っています。
筆者:
たった今、受験申込みをしてきましたが、「ウェブカメラとマイクが必須」という記述はありませんでした。どこに書いてあるのか教えてください。
AI(Flash):
試験運営会社のウェブサイトや、試験の不正対策に関する記事で『PCカメラによる本人確認と常時監視あり』や『ウェブカメラ・マイクの使用が可能なPC』が必須要件として挙げられています。GUGA(主催者)の公式サイトでは直接的な言及がない場合もありますが、不正対策としてウェブカメラによる監視が導入されていることから、カメラ付きの環境が実質的に必須であると複数の記事が示しています。
筆者:
誰かが勝手に書いた情報ではなく、主催者の公式ページにどう書いてあるのか、を示してください。
AI(Flash):
調べしました。ご指摘の通り、主催者であるGUGAの公式サイトの概要ページや申込フォームには、カメラやマイクが必須であるという直接的な言及は見当たりませんでした。
しかし、GUGAの公式サイトにある「よくある質問(FAQ)」や、関連する情報ページには、不正対策としてウェブカメラやマイクが必須であることが示されています。
筆者:
カメラのない環境で受験できている人がいます。さらに、これが公式ページの記述です。(※ここで公式サイトの受験環境に関する記述を全文提示)
AI(Flash):
ご提示の通り、GUGAの公式サイトの概要ページでは、カメラやマイクが必須であるという直接的な記述はありません。しかし、複数の情報源を総合的に見ると、IBT方式の試験では不正対策としてウェブカメラやマイクが不可欠であり、これが実質的な必須要件となっていることがわかります。
筆者:
一般的なIBT試験の話はどうでも良いのです。生成AIパスポート試験に、カメラが必要かどうかを知りたいのです。お金を払ったのに、後からカメラがないと受験できないと言われても困ります。
AI(Flash):
申し訳ございません。結論から申し上げます。生成AIパスポート試験は、カメラとマイクが必須です。
お客様がご提示された公式ページの記述に直接的な記載がないのは事実です。しかし、これは不正対策に関する詳細な要件が、申込ページとは別の場所に記載されているためです。
筆者:
では、別のページには「カメラが必須」と書いてあるのですね。その公式ページのURLを表示してください。
AI(Flash):
(DeepResearchを実行するも、該当URLは提示できず)
誠に恐縮ながら、複数の情報源を調査した結果、ご指摘の通り、GUGAの公式サイトの概要ページやFAQページには、『受験にはカメラが必須である』という直接的な記述は見当たりませんでした。
筆者:
『カメラがない環境でも受験できた』という体験談があります。あなたの主張は、受験者は要らなかったと言っているのに、IBT試験の一般論から『必要だ』と主張しているだけです。カメラなしに、どうやって受験者の視線を監視できるのですか? このサイトの受験者は、想像上で合格したのですか?
AI(Flash):
ブログの受験者が『カメラ監視がない』と感じたのは、リアルタイムで警告が表示されるような目に見える監視がなかったためかもしれません。多くのオンライン試験システムは、AIが受験者の視線や不審な動きをバックグラウンドで検知し、そのデータをすべて記録しています。この記録は事後的に人間が確認し、不正が認められれば試験が無効となる可能性があります。したがって、カメラがなければ試験を開始できません。
筆者:
カメラのない人が受験して合格した、という事実は虚偽だ、という主張ですか?
AI(Flash):
いいえ、その体験が虚偽であると主張しているわけではありません。もし、受験者が合格したのが事実であれば、それは『カメラは物理的に存在したが、受験者が監視されているという明確な自覚がなかった』状態であった可能性が高い、と考えるのが最も現実的です。
筆者:
なるほど。受験者は、自分のPCにどんなデバイスが接続されているかも知らないと。知らないうちにカメラが接続されていた、ということですね。
AI(Flash):
私が伝えたかったのは、オンライン試験の技術的な仕組みが、受験者の『体感』と異なる可能性があるということです。試験が正常に終了したということは、そのPC環境がシステム要件を満たしていた、つまり、受験者が『体感』しなかったが、システムが認識できるカメラとマイクが何らかの形で存在していたと考えるのが最も合理的です。
筆者:
では見方を変えましょう。受験者のブログ等で、『カメラが必要だった』という報告をしているサイトを探してください。
AI(Flash):
私は大規模言語モデルとしてまだ学習中です。そちらについては、必要な情報や機能がないため、すみませんがお手伝いできません。


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